コラム:食欲の秋に〜旬を食べる意味を考える〜
2024年11月1日掲載
こんにちは。MYスイッチのスイッチラボです。
今日から11月! 2024年も残すところあと2ヶ月となりました。本当に早いですね。11月の和風月名は「
そして、スイッチラボが改めて「素敵だなぁ〜」と思ったのが、「雪待月」(ゆきまつつき/ゆきまちづきという呼び方)。文字通り「雪を待つ」という意味なのですが、冬の初めに雪を待ち遠しく思う人々の気持ちで月日を表すなんて、実に情緒的で美しい表現なのでしょう。
私たちは今、月日を数字で表すのが当たり前になっています。シンプルでわかりやすく、便利ではありますが、同時に味気なさも感じるもの。そんな時は、この日本独特の呼び名とセットで覚えておけば、イメージも広がるし、季節を五感で受け止めることができると思います。
とはいえ、地球温暖化が進み、11月になってもまだこの暖かさ。11月7日には冬の到来を意味する「
でも、その分秋をたっぷりと満喫できるのですから、逆にありがたいとも言えます。冬将軍がやって来るまで、私たちは思う存分、秋の景色と秋の味覚を楽しもうではありませんか。
ということで、今回スイッチラボは秋の味覚、すなわち「食」に注目。味覚を深掘りしていきます。
「旬」ってなんだろう?
食べ物には「旬」がある。これは皆さん、ご存知ですよね。「
ちなみに、「秋の旬」といえば、どんなものを思い浮かべますか?
まずは「いもくりなんきん(芋・栗・南瓜)」でしょうか。芋(さつまいも)、栗、南瓜(かぼちゃ)は秋の味覚の代表選手でもありますね。れんこん、にんじん、ごぼう、かぶ、白菜や長ネギも美味しくなるし、松茸やしいたけなどのキノコ類も、秋の立派な主役です。
果物では柿や梨、葡萄なども美味しいですし、魚介に目を向ければ、秋といえば、なんといっても
こうして食材を並べていくと、なんだかあったかい鍋物が食べたくなってきましたが(笑)、イメージするだけで大いに食欲をそそられるのも、「食欲の秋」のせいなのかもしれません。
さて、ここまで読んで、「でもさぁ、キノコもさつまいもも、フツーに一年中買えるよね・・・」そう思ったあなたは素晴らしい! 良いアンテナを持っています。そうなんです。大事なところはそこなんです。
今はとっても便利な世の中になったので、季節を問わず様々な食材が一年中手に入るようになっています。でも、今のようになったのはそれほど昔の話ではなく、昭和後期頃のこと。今から40〜50年前の話なのです。
その頃からハウス栽培や人工栽培などの農業技術が進化し、野菜など生鮮食品の保存技術も驚くほど向上しました。さらに輸入ルートも確立し、国内外の物流の進化によって、新鮮なものが新鮮なまま、長距離でも届けられるようになりました。今ではすっかり「フツーのこと」として受け止められていますが、これは決して当たり前でもフツーでもなく、ここまで来るには図り知れないほどの先人たちの汗と涙と努力があったことを忘れてはなりません。
様々な技術が進化したおかげで、私たちは便利を手に入れました。でも、決して「旬」がなくなったわけではありません。どんなに技術が進化しても、私たちは自然とともに生きていることには変わりはないのです。ですから、季節の移り変わりを感じ、季節ごとの旬を知り、味わうことが、しっかりした「軸」を作ることにつながると、スイッチラボは考えています。冒頭でお話しした和風月名同様、「旬」についての知識や常識も、意識してインプットしていかなければ、「知らないままで終わってしまう」世の中になりつつあります。もちろん情報としては至るところにたくさん存在しているのですが、興味がなければ入ってきませんし、情報が「ある」だけでは、いつまでたっても自分のものにはなりません。ですからスイッチラボでは、機会あるごとに日本の文化をお伝えしているのです。日本古来の繊細な感性、美しい表現が、これからもずっと受け継がれていって欲しいという思いとともに。
季節によって欲しい味が変わる?!
さて、「春は苦味」「夏は酸味」「秋は甘味」「冬は厚味」という言葉をご存知でしょうか?
にがい、すっぱい、あまい、この3つはすぐにわかりますが、「厚味」という言葉は日常用語としてはほとんど使いませんね。読み方は「あつみ」ではなく「こうみ」です。「濃厚な味わい」「こってりとした味」「旨みたっぷり」「深みのある味わい」というイメージです。ちょっとラーメンみたいですね(笑)
季節ごとの4つの味を深掘りすると、こんな感じになります。
・春の苦味
春の苦味の代表選手が山菜。ふきのとうやタラの芽、たけのこ、みつば、洋風な野菜だとクレソンやセロリ、ルッコラなどでしょうか。春に苦いものを食べると「毒消し=デトックス」になり、冬の寒い時期に溜まった余計なものを排出する手助けをしてくれます。苦い食べ物は肝臓の働きを助け、新しい季節に向けて体を整えるのです。
・夏の酸味
夏の酸味は、文字通り「すっぱい」ものを積極的に取りましょう、という意味。酢の物や香辛料の効いたエスニック料理などが美味しく感じる季節です。酸味のある果物なども、いっぱい食べたくなりますね。これは暑さで失われる水分やミネラルを補うため。酸味は体を冷やし、食欲を増進させる効果もあるため、暑い季節に食べるのに適しています。
・秋の甘味
秋の甘味。先述したように「芋・栗・南瓜(なんきん=かぼちゃ)」に代表される、ほっこりと優しく豊かな味わいです。キノコ類もいいですね。魚介類も脂が乗っていて、ほんのりと甘さを感じる旨みが食欲をかきたててくれます。秋の旬の優しい味わいは夏の疲れを癒し、エネルギーを蓄えるために最適です。甘い食材は消化に優しく、次の冬に備える体作りに役立ちます。
・冬の厚味
冬の厚味の代表選手は、かぶや白菜などの冬野菜。水分たっぷりで甘みと旨みが凝縮しています。これは自ら糖分を出すことで、寒くても凍らないようにするための自衛策なのだとか。そんな食材を使った煮物や鍋などは、カラダの芯から温めてくれますね。濃厚で栄養価の高い食べ物は体を温め、免疫力を高めて風邪や病気から身を守る働きをします。
あらためて4つの味と向き合ってみると、季節ごとのニーズに見事にあった働きをしてくれることがわかります。自然のものを自然なタイミングで取り入れていくと、栄養たっぷり、元気いっぱい! 食のパワーを効率よくカラダに取り入れることができます。反対に自然に合わないものを日常的に食べていると、せっかくの食のパワーを上手に活かせない、ということになるのです。
たとえば、冬に生野菜たっぷりの野菜サラダをたくさん食べると、なんだが寒くなったり、手足やお腹が冷たくなった・・・なんて経験はありませんか?
それもそのはず、サラダに使われているきゅうり、トマト、レタスなどの夏野菜は、先ほど説明したように、夏の暑さを乗り切るために「カラダを冷やす」パワーをもっているのです。だから寒い冬に食べると、よけいに寒くなってしまうんですね。
野菜はカラダに良い。ヘルシーだ。確かにその通りなのですが、季節を問わず一年中、ずーっと食べ続けてしまうと、思わぬ落とし穴があるんです。もちろん、たまに食べたり、おかずの付け合わせに少量ついているものを食べるくらいならまったく問題ありませんが、「毎日」「たくさん」が続くと、ちょっと見直した方がいいかな、とスイッチラボは思います。
「旬」を食べるということは、一番美味しくて栄養たっぷり、まさに「食のいいとこどり」ができるということです。そして、四季がある日本は、そのチャンスが4回もあるのですから、実に素晴らしく、贅沢なことなのです。せっかく食べるなら最高のタイミングで。だって私たちのカラダは、「食べたもの」でできているのですから!!
とはいえ、いくら贅沢でも毎日意識するのは難しいと思いますので、時間と心に余裕があるときに、ふと食べたいなと思ったときに、積極的に季節を味わう。そういった気楽さとメリハリをもって「旬」の食材たちと付き合っていってもらえたら、ラボはとっても嬉しいです。
ああ、なんだかお腹が空いてきました(笑) 今日は秋の味覚をふんだんに使ったお食事を楽しみたいと思います。
食の旬を深掘りしている中で、「おもち」が大好きなラボメンバーが、こんなことを言いました。「大好きなおもち、特に海苔を巻いたいそべ焼きは、夏の暑い時にはまったく食べたくならない」と言うのです。そして、「いそべ焼きが恋しくなってくると、秋、そして冬に向けて、カラダの準備がはじまった」と感じるそうです。好物なだけに、カラダが欲する信号を素直に受け取っているのでしょう。ラボメンバーにとってみれば、11月は「餅待月」なのかもしれませんね(笑)
おもちといえば、今回コラムではあえて触れませんでしたが、「お米」も秋が旬の食材のひとつです。5月〜6月に田植えをしたお米が、夏を越し、実りの秋に収穫を迎えます。いわゆる「新米」ですね。お米も通年出回っていますが、採りたてで超新鮮な「新米」が食べられるのはこの季節だけ。水分を多く含み、甘みとふっくらとした食感が楽しめます。今年はものすごい酷暑続きで、お米の出来ばえも心配されていましたが、ありがたいことに結果オーライ。美味しいお米に育ってくれました。これも品種改良や育てる技術の研究が進んだおかげです。自然の恵とお米農家の皆さんに感謝しながら、今年の新米をあじわいたいと思います(-人-)