コラム:ジャストお盆にお盆のことを考える
2024年8月15日掲載
こんにちは、MYスイッチのスイッチラボです。
早いもので今日は8月15日。たっぷりあると思っていた夏休みも、いよいよ後半となりました。すでに夏休みの宿題を片付けて余裕の方もいれば、これから本気出す!という方もいらっしゃると思います。これから頑張るタイプの方は、くれぐれもムリせずあせらず、「必ずできる!」と自分を信じて、目の前のことに取り組んでくださいね。
地域によっては9月を待たずして2学期がスタートするところもあるようですので、いずれにしても、貴重な残りの夏休みを目一杯楽しんでほしいと思います。
さて、本日スイッチラボが「深掘り」していくのは「お盆(おぼん)」です。夏休みのことを「お盆休み」と言ったり、「盆踊り大会」などもあるので、「おぼん」という言葉は知っていると思います。
でも、突然、他の人から「おぼんって何?」と聞かれたら、あなたは即答できますか?
もっとも身近な「お盆」は、お茶碗やコップを運ぶときに使う平たい道具、今風に言えば「トレー」ですが、そのお盆と夏のお盆は、何か関係があるの?
そんなふうに聞かれたら、「・・・さぁ・・・???」となってしまいますよね。
大人でもキチンと説明できる人は、あまりいないのではないでしょうか?
なんとなく知っているけど、よくわからない。
なんとなくわかってはいるけど、他の人に説明はできない。
特に現代の日本人は、ふわっとしかわかっていないことが多いと、スイッチラボは感じています。
もともと「お盆」は仏教行事のひとつでしたが、もはや宗教の枠を超えて、日本独自の文化、風習になっています。「仏教のなんかでしょ」と軽く片付けるのではなく、古くから来から受け継がれてきた文化として、歴史として、知っておいてほしいことのひとつです。
少なくとも、海外のお友達から「お盆ってなに?」と聞かれたときに、説明できるくらいの知識は持っておきたいもの。
そこでスイッチラボでは、あえてお盆真っ最中の今、お盆を正面から深掘りしてみました。知れば楽しい豆知識的な目線で「お盆」との距離感を縮めていただければうれしいです。
結構知らない「お盆」のそもそも
まずはお盆の歴史、起源からです。諸説ありますが、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という仏教の行事が起源だと言われています。思わず「はい?」と聞き返したくなるほど耳慣れない言葉ですが、それもそのはず、この用語はサンスクリット語(古代インドで使われていた言葉のひとつ)の「ullambana(ウランバナ)」が語源なんだそうです。
もともと仏教は、紀元前5年ごろにインドで成立したもの。それが中国を経由して、日本には飛鳥時代に伝わりました。仏教伝来は 538年説と552年説がありますが、いずれにしろ長〜い年月をかけて伝わり、その間にもとの言葉であるサンスクリット語に相応しい漢字が当てはめられました。
今も日本の仏教は漢字だらけで、一目見ただけで「わー、難しい」と思うかもしれませんが、昔むかしその昔、一所懸命修行し、勉強した人たちが、「言葉の壁を超えて、多くの人に伝えたい!」という強い思いの結晶なんだと思うと、ちょっと見方が変わってきませんか?
いつから今のスタイルに?
もともと「お盆」は宮中の行事でしたが、それが庶民まで広がったのは江戸時代になってからだと言われています。現在では8月13日から16日が一般的なお盆の期間ですが、これが定着したのは明治時代以降から。意外と歴史は浅いのです。
当コラムでも暦のことはたびたび触れていますが、明治政府が太陽暦(新暦)を採用したのは1873年(明治6年)のこと。それ以前は旧暦(昔のカレンダー)に基づいて行われていたため、地域ごとに異なる時期にお盆が行われていました。
その名残で、東京をはじめとする関東地方では、7月13日から16日までがお盆(=新盆・にいぼん)とされています。1ヶ月早いのは新暦と旧暦と差が約1ヶ月あるからです。それが東京の生活リズムに合っていたこともあり、今も7月にお盆を迎えている・・・という説に、スイッチラボは「なるほど〜」と納得してしまいました。どの地域がいつお盆を迎えるか、この機会に調べてみるのも面白いですね。地域ごとの歴史や背景を知ることにつながると思います。
なんのためにやるの?
一言でいうと、ご先祖さまの供養(くよう)です。供養というと一気に仏教色が出ちゃいますが、亡くなった方を思い、感謝の気持ちを伝え、「こちらは元気にやってますよ」と報告して安心してもらうことです。なので、特別なことではないんですよね。
今、皆さんは、お父さんとお母さんから生まれてきて2024年の日本、もっと大きくいうと地球に生きていますよね。お父さん、お母さんにもそれぞれお父さんとお母さんがいて、そのまた上にもお父さんとお母さんがいて・・・と、想像の輪を広げてみてください。
おじいちゃん、おばあちゃんと呼べる人は4人、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんは8人、ひいひいおじいちゃん、ひいひいおばあちゃんは16人、そのまた上のひいひいひい・・・とキリがないのでここから先は数字だけにしますが、32人、64人と増えていき、7世代で127人、10代までさかのぼるとなんと1024人!のご先祖さまがいる計算になるのです。
このほかに兄弟姉妹、おじちゃん、おばちゃんたちも加えると、なんと大勢の親族関係者たちがいることか! もう、守られ感、ハンパないですね(笑)
この方々がいなかったら、生まれてこなかったわけですから、生命の不思議、神秘を思いながら、「ずっと先のおじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう」という気持ちを伝える良いタイミングが「お盆」なのです。
知ると楽しいお盆の雑学
では、ここからは1問1答式で、お盆についての知識を深めていきましょう。
Q1.「送り火」と「迎え火」ってなんのためにやるの?
今では住宅事情もあり、実際にやるご家庭も少なくなってしまいましたが、お盆初日の13日には「迎え火(むかえび)」を、お盆の最終日の16日には「送り火」をたく習慣があります。
迎え火は文字通り「お迎え」するためのあかりのこと。祖先のみなさまが迷わずお家に来られるように、道案内をしているのです。
送り火はその反対。今までお家でくつろいでくれたご先祖さまを、元の世界にご機嫌よく戻ってもらうために、行く道を照らす役割をします。
Q2.キュウリとナスに足をつけたものを見かけるけど、あれって何?
お仏壇の前に、果物などのお供えものの他に、キュウリとナスに割り箸などで足をつけたお供えものを見たことはありませんか? これも日本独特の文化で、意味がわかると「なるほど!」となります。
この2つはご先祖さまの「乗り物」です。正式にはキュウリを「精霊馬(しょうりょううま)」、ナスを精霊牛(しょうりょううし)と呼びます。要するに馬と牛に見立てているのですが、それぞれ役割がちゃ〜んとあるのです。
キュウリで作ったお馬さんは、ご先祖さまが私たちのお家に来るときに乗るものです。馬に乗ってビューンとひとっとびにお家に来てほしい。早くお迎えしたいという気持ちの表れです。
帰り道に乗ってもらうのは、ナスで作った牛さんです。ご存知の通り、牛はゆっくり歩きますよね。帰りは景色でも眺めながらゆっくりお帰りくださいね。私たちも名残惜しいです・・・そんな気持ちで、2つの乗り物を用意しているのです。
なんという気配り! これぞ日本の「お・も・て・な・し」ですね。
Q3.おぼん(トレー)とお盆の関係は?
お盆の期間には、ご先祖様にご馳走を食べてもらおうと、たくさんのお供物(おそなえもの)をします。多くが食べ物なので、じか置きではなく、お盆の上において供えました。そのことから、いつしかお供物を載せる器を「おぼん」と呼ぶようになった・・・という説が有力です。
時代とともに使い方が変わるのも道具の宿命です。もともとはお供物用だったお盆も、日常の食事のときに食器を運ぶときに使われるようになっていったのでしょう。きっと使って見たら「あら、便利」と思ったことがきっかけになったのではないか・・・なんて想像をふきくらませていくのも楽しいですね。
Q4.なんて「盆踊り」っていうの?
盆踊りのルーツは、平安時代に行われていた「念仏踊(ねんぶつおどり)」だと言われています。それが時代とともにスタイルを変え、発展し、江戸時代には庶民の娯楽として定着したそうです。もともとはご先祖さまと一緒に踊ることで、ご先祖さまに楽しんでもらった行事だったのかもしれませんが、盆踊りを通して地域の結束も強まり、地域ごとに独自のスタイルが生まれていったようです。
今もアニソン(アニメソング)の盆踊りなど、新作がどんどん生まれていますね。今も発展しているのは、結局「みんなで踊ると楽しい!!」がベースになっているからだと思います。お祭りの原点ですね。
Q4.他の国や宗教でも、お盆的なものはあるの?
もちろんあります。キリスト教(カトリック)では「 万聖節(ばんせいせつ)」と「死者の日」というものがあり、これらが「ハロウィン」の起源だと言われています。中国 では「中元節(ちゅうげんせつ)」、ベトナムでは「Vu Lan」と呼ばれる行事が旧暦の7月15日に行われ、韓国では「 チュソク(秋夕)」という行事が旧暦の8月15日に行われています。
「日本はこうだけど、他の国はどうなの?」という視点で調べてみると、歴史や文化の違いがよくわかり、知ればしるほど楽しくなっていくと思います。ただ物事や年号を暗記するのではなく、「生きた知識」として歴史をインプットしていってほしい。そして人に聞かれたら、楽しく、わかりやすく説明できる人になってほしい。お盆休みの最中にしみじみ思ったスイッチラボでした。
ではまた次回。元気にお目にかかりましょう!
以上、スイッチラボでした。
今回、キュウリの馬とナスの牛の話をしましたが、「そもそも仏壇がないので、見たことがない」という声もあり、あらためて時代の変化を感じたスイッチラボメンバー。子供の頃お盆休みに遊びにいったおじいちゃんおばあちゃんの家には、大きくて立派な仏壇があり、部屋(仏間・ぶつま)にはたくさんのご先祖さまの写真が飾られていました。昭和の頃にはごくごく当たり前の風景が、今では映画のワンシーンのように感じられるのかもしれませんね。
ある調査によると2019年の仏壇所有率は約50%で、ここ20年の間にゆるやかに減少したという結果になったとありました。「半分も」持っていると見るか、「半分しか」持っていないと見るかは受け止め方次第ですが、時代とともに変化をしてこそ、伝統と文化は守られていくもの。最近の仏壇は驚くほどスタイリッシュで、かっこいいデザインになっているのには驚きました。いい機会ですから、ぜひ画像検索してみてください。前回のテーマである「お札」にも細かなデザインがされていましたが、仏壇も「へぇ〜、こんなところまで・・・」と、思わず感心するほどの美しい細工がほどこされているものがたくさんあります。仏壇も日本を代表する伝統工芸のひとつ。今度仏壇を見るチャンスがあったら、扉の裏や、中の方までしみじみと眺めてみてはいかがでしょうか。今まで気が付かなかった新たな世界が発見できるかもしれませんよ。