宝ものは君たちの中にある

コラム:あなたはギリギリ派? それとも先取り派?
今から身につけておきたい「時間」との付き合い方

2024年6月15日掲載

こんにちは。MYスイッチのスイッチラボです。

突然ですが、ご存じでしたか? 6月10日は「時の記念日」だということを。

その由来について調べてみると、なんと『日本書紀』にありました(諸説あります)。

当時の天皇(天智天皇)が「水時計」を設置し、その時刻を鐘や太鼓を鳴らして知らせた・・・ということが書いてあるそうです。初めて行った日を西暦に直すと「671年6月10日」になるので、この日を時の記念日に定めたと言われています。
(参考:飛鳥資料館 https://www.nabunken.go.jp/asuka/index.html

今でも目覚ましやタイマー、学校のチャイムなど、「時刻を音で知らせる」という習慣は受け継がれています。時代と共に音そのものはだいぶ変わりましたが(今ではほとんどがデジタル音ですね)、そのルーツが飛鳥時代、今から1350年以上も前に始まったとなると、これはもうロマンしか感じません。昔の人も時を知らせる音を聞いて、「あ、お昼ご飯だ」とか「もう帰らなきゃ」などと思っていたのかも・・・なんて想像すると、楽しくなりますね。今日は「時間」との付き合い方について、スイッチラボ流に深掘りしていきたいと思います。

夏休みの宿題、あなたはギリギリ派? それとも先取り派?

年齢にかかわらず「時間の使い方」は永遠のテーマです。少しでも良い時間を過ごしたい。有効に時間を活用したい。ムダな時間をなくしたい・・・誰もがそう思いながらも、なかなか思うようにできないのも、時間との付き合い方の難しいところです。

では、ここで問題です。みなさんは「夏休みの宿題」をどうやって取り組みましたか? 

実はこの質問が、「今まで時間とどう付き合ってきたか?」がバッチリわかってしまう、魔法の質問なんです。現役の方は去年のことを、大人の方は昔を懐かしんで、自分が子どもの頃のことを思い出してみてください。大きくは次の3つのタイプに分けられると思います。

[Aタイプ]:さっさと済ます「先取り派」
 どうせやらなきゃならないならば、先に終わらせてから、あとは心置きなく自由に過ごそうというタイプ。

[Bタイプ]:最終ラウンドの追い込みが見事な「ギリギリ派」
 せっかくの休みなんだから、まずは普段できないことをやる! そして間に合わせるためのパワーと集中力はピカイチ。人生のメリハリが味わえるタイプ。

[Cタイプ]:その中間派(余裕とスリルの両方が味わえる)

みなさんは、どのタイプですか?

Aタイプのように、先にさっさと済ませるためには、「計画」が必要になると思います。もちろん、BやCタイプも「よし!今年こそ、宿題は早めにやるぞ〜〜〜!」と決心し、早い段階で計画を立てたことがあると思います。ただ、その計画通りにサクッと結果が出せないのは、計画を立てるだけで満足してしまうか、せっかく立てた計画の内容を忘れてしまうという、ちょっと残念な「おまけ」がついてきてしまうのですよね。このあたりのとこも、大切なテーマなので、また別の切り口で取り上げてみたいと思います。

さて、「たましいひゃくまで」ということわざをご存知でしょうか? 3歳の子供の性質(性格)は、100歳になっても変わらない、といった意味合いの言葉です。もちろん3歳の時に夏休みの宿題はないと思いますが、小さい頃に身についた習慣は、大人になっても大なり小なり引き継がれていくものです。

だからといってBタイプの人は、一生「ギリギリ間に合う人生」を送らなければならないのかというと、まったくもってそんなことはありません。人間の素晴らしいのは、いつだって【わかれば変われる】というところ。いつもギリギリになってしまうBタイプの人だって、脳と心が理解すれば、ちゃんと「先取り派」に変身できる。その逆もまたしかりです。

「ギリギリ派」から「先取り派」へのススメ

こうやって3つのタイプを見比べてみると、スマートなのは断然Aの「先取り派」ですよね。やるべきことを先にやり、あとはゆっくり自由に時間を使う・・・なんてステキなのでしょう。

でも、「ギリギリ派」の人が味わえる、やったー! できたー!という達成感も捨てがたい気がします。ギリギリ間に合った時の快感、自分の限界突破を感じるあの瞬間! そもそもこのタイプの人は「間にあわせる」ポテンシャル(=能力)は持っているので、集中力もものすごいと思います。あの快感をもう一度。それが記憶のどこかに刷り込まれているから、あえてギリギリの線を狙ってしまうのかもしれません。

でも、ギリギリ派は、夏休みの宿題に限らず、いろんなところがギリギリになりがちです。たとえば、集合時間は、いつもギリギリセーフ。許される範囲での「やや遅刻」の常習犯かもしれません。提出物はいつも締切当日かちょい遅れ。「間に合えばOK」という思いが、どこかにあるのでしょう。

ただ、ギリギリ派の人の話は、振り返れば笑い話になることが多く、いいネタにもなるので、おもしろい! 人生を楽しんでいるね! と感じる人がたくさんいることも事実です。人生のメリハリとでも言うのでしょうか。でも、この「ギリギリマインド」は、かなりリスキー(危険)であることも、同時にわかっておかなければなりません。

間に合えばまだしも、飛行機の時間に「ギリギリ間に合わなかった」としたら? 新幹線に「ギリギリ乗れなかった」ら? そしてそれが受験当日だったとしたら・・・?!?! きゃーー、想像するだけで怖くなりますね。

ということで、スイッチラボはここから全力で「先取りマインド」を身につけることをお勧めしていくわけですが、ラボが目指すのはAタイプとBタイプの合わせ技! 「ものごとは先取りしつつもギリギリも楽しめる」メンタリティーを身につけるコツを、深掘りしていきたいと思います。

とはいえ、ギリギリがダメだよ、といっているわけではありません。それも個性であり性分ですから、それもよし。全部違って全部よしです。でも、成長して大人になるにつれ、そして社会に出ると「どちらが得か」を痛感することになります。もうおわかりですね。圧倒的に先取り派の方がいろいろ「得」するよ、ということなのです。では、先取り派になるにはどうしたら良いか? そのキーワードが「はやさ」なのです。

大切なのは「速さ」よりも「早さ」

デキる人の象徴とも言えるのが、「仕事がはやい」という評価です。なんでもサクッと短時間に、しかも美しく物事を整えられたら、それはかっこいいですよね。最近では「タイパ(=タイムパフォーマンス=(時間対効果)」なる言葉が市民権を得ており、なんでも高速化される傾向にありますので、仕事も「速さ=スピード」を求めがちです。

               

でも、仕事がスピーディーにこなせるようになるには、かなりの経験と技術が必要です。一朝一夕にはそのスピード感を身につけることはできません。よほどの特殊技能の持ち主にならできるのかもしませんが、一般人は、何度も何度も繰り返しやることで、だんだんとコツを掴み、やり方がわかっていった結果、「速く」なっていくのです。

それに対して「どんな人」でも自分が「その気」になりさえすればできるのが「早さ」です。もっというと、「早くやる=早く着手する」ことですね。先ほども言いましたが、処理スピードを上げるには、それなりの訓練が必要です。そして、同僚、友人、同級生、実はその処理スピード自体、ものすごい差があるかといえば、実はそうでもないのです。

さらに世の中、往々にして設定したスケジュールはおいそれとは変更できないようになっています(そうじゃないと何かと混乱しますからね)。「この日までに」と決められたなら、その日までにやらなければなりません。

ゴールは決まっている。スピードも大差ない。そんな中で早く着実に結果を出すためには・・・?!

そうです! スタートを早くすればいい! 夏休みの宿題、先取り理論です。

よく考えればシンプルなことなのですが、意外とそういう目線で考える人は少ないようです。「デキる人は仕事がはやい」は、速いよりも「早い」が重要。決して「速く」動いているわけではなく、行動が「早い」のです。すぐに返事をする。結論が出せない時には「結論が出せません」とすぐに返事をする。すぐに聞く。すぐに動く。この打てば響くような反応が、評価と信頼を連れてくるのです。

「早くやる」は良いことづくめ!

取り組みを早くすることで、とてもたくさんのメリットが得られます。これは年を重ね、成長すればするほど実感すると思いますが、良いことが先にまっていることがわかると、俄然やる気も出てきますよね。なので今はまだピンとこなくても大丈夫。ああ、そんなこと、スイッチラボが言ってたなぁ〜くらいの感覚で読んでみてください。

当たり前のことですが、他の人より1日早く着手すれば、人より1日早く終えることができます(同じくらいの能力ならば)。そして1日余裕が生まれます。時間に「余白」ができるのです。この余白こそが大切で、この時間は何にでも使うことができます。

ゆっくり見直し、検証し、どんどんブラッシュアップに使うもよし。早く終えた自分にご褒美をあげるもよし。なんならもう一案、新しいアイデアを提案することだってできてしまいます。

やるべきことはすでにクリアしているわけですから、まさかの余白でもう一案。こんなことをしてもらったら、お願いした方はとってもうれしいですよね。そこまでやってくれる人はあまりいないので、記憶に残るし、高い評価も得られます。

これが期限ギリギリだったら、修正もできませんし、ブラッシュアップもできません。

さらにもう一案など夢のまた夢。クォリティーとしては、どんどん差が開いてしまいます。

そして、自分にとっても素晴らしいメリットが。この余分な「何にでも使える時間」が人より多めにあることが、心のゆとりを生み、精神をリラックスさせます。リラックスした状態じゃないと、人は真の実力を発揮できないようにできているんです。

要するに「早くやる」ことで得られるものは、「相手よし」「周り良し」「自分よし」の三方(さんぽう)よし!

夏休みの宿題なら、先生の評価もよし、ご家族や友だちの評判もすこぶる良好、そして自分も早くできたことは自信になるし、嬉し、楽しい、気持ちいい!

仕事なら、依頼主の信用も評価も得られ、その噂は業界に広がり、それが自分の自信につながり、もっといい仕事をしようというエネルギーになっていく。この上昇スパイラルを産むのが「早さ」だというわけです。

あえて作った余裕やゆとり、隙間のことを「遊び(あそび)」と言います。主に建造物に使われる言葉ですが、車のハンドルやべダル、洋裁などにも使われています。寸法どおりにピッタリと作ってしまうと、物は動きが取れなくなります。たとえば、窓に「遊び」がなかったら、まったく動かず、開け閉めすることもできませんし、洋服に「遊び」がなかったら、腕を上げるだけで、脇の下がビリッと破けてしまいます。「遊び」がないと物体はとても弱く、すぐにポキっと折れたり、ヒビが入ったりするのです。人生でも、ものづくりの世界でも、「遊び」は大切なんですね。

あえて作る隙間、余白、ゆとり。それが「ある」と「ない」では大きな違いになりますし、これが積み重なれば、その違いはとてつもなく大きなものになっていくのです。

いつもギリギリ。これもスリリングで面白いとは思いますが、「遊び」で味わう心のゆとり。

あなたはどちらを選びますか?

早くやるからゆっくりできる 「ゆっくり」のすごい効果

さて、ここでいきなり話題は「自律神経(じりつしんけい)」に飛びます。ちゃんと着いてきてくださいね。大丈夫、ちゃんとつながりますから(笑) 

自律神経とは身体の機能を整える神経系のことで、血圧や呼吸、消化、体温調節などを司っています。「自らを律する(みずからをりっする)」神経という名前の通り、自分の意思で(気合いや根性でも)どうこうできるものではありません。この自律神経が正常に機能していると、気分も良いし、体調も良好。逆に自律神経に乱れが生じると、疲れやすい、眠れない、肩こりがひどい、やる気が出ないなど、なんらかの注意信号が発せられるようになります。

自律神経がなによりもご機嫌になり、ベストパフォーマンスを発揮できるのは、どんな状態なのかご存知ですか?

実は先日、ラボメンバーは、自律神経の専門家にして第一人者である順天堂大学医学部・小林弘幸教授の講義を拝聴する機会にめぐまれました。そこで聞いたことが、まさに今回のテーマである「先取り」と「ギリギリ」にピッタリなのです! これはぜひ、スイッチラボ読者のみなさまにお伝えせねば!と、思って書かせていただきました。

ちょっとビックリされると思いますが、いろんな自律神経の整え方がある中、もっとも手軽で確実、しかも一銭もかからない方法は、何事も「ゆっくり」やること、なんだそうです。

ゆっくり話す。ゆっくり噛む。ゆっくり食べる。ゆっくり動く。ゆっくり歩く。ゆっくり握る。持っているものをゆっくり置く。人に何かを渡す時にもゆっくりと・・・。なんでもゆっくり。いつもゆっくり。ゆっくり、ゆっくり・・・。

これを意識的にやっていくことで、人はとても落ち着いて、無理をしないで自分の実力を発揮できるのだそうです。

えー、そんなことで?と思った方もいらっしゃると思いますが、「騙されたと思って今日から実践してみて」と言われたので、ラボメンバーも意識的にやるように心がけてみています。

でも、何かと忙しい毎日。時間に追われる中での「ゆっくり行動」は、なかなかに難しいこともわかりました。でも、1日24時間、1,440分、86,400秒(←計算してみました 笑),

ずっと忙しいわけではないので、食事の時、お風呂の時、寝る前など、ホッとできるときのみ、「ゆっくり行動」をしてみたところ、気持ちも落ち着くし、いつもより寝つきがよくなったように感じています。

なにより、「わーー、間に合わない〜」と、ギリギリマインドが発動している中でも、「ゆっくり、ゆっくり・・・」と、自分に言い聞かすだけでも、深い呼吸ができるようになり、自然と落ち着きを取り戻せるように思います。ギリギリの中でもあえてのゆっくり。心にいつも「ゆっくりスイッチ」を。
今回はこれだけでも覚えておいてほしいと思います。

ラボのつぶやき

今回は「早さ」と「速さ」の違いにスポットを当ててみましたが、英語だともっとわかりやすいです。「早さ」は「early(アーリー)」、「速さ」は「fast(ファスト)」と言います。「アーリー」はほとんど日本語では使われませんが、「ファスト」はお馴染みの「ファーストフード」のファストです。日本では「ファースト」と伸ばして使われますが、正しくは「ファストフード(fast food )」。素早くサッと出てきて、ササっと短時間で食べられるところから「fast(速い)food(食べ物)」、というわけです。ちなみにイギリス式発音ではfastは「ファースト」と聞こえるので、ファーストフードも間違いではないそうですが、日本語で「ファースト」といえば、「一番」とか「一塁」の方がポピュラーですから、勘違いしている人もいるのでは? とっても細かいことですが、言葉の意味をしっかり理解しておくことで、今までなんとなく見ていた世界も、どこか違って見えませんか?