志の継承―出会いが紡いだ学びの軌跡
代表のメッセージ 2025年4月1日掲載
先日、当社が関係する進学塾の企画で、小学生対象の「トップリーダー合宿」が実施されました。この合宿は、「将来のトップリーダーを育てる」という理念のもと、小学生たちを対象に毎年行っているものです。企画のきっかけは、長年ご指導いただいている西村典芳先生(流通科学大学教授)からの一言でした。今年で12回目を迎えました。
今回の合宿では、次の4つの学びの機会を頂戴しました。
- 島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授、元東京都立大学理事長)によるご講演
- 株式会社セールスフォース・ジャパンの訪問と講演
- 東京大学本郷キャンパスの訪問(卒塾生・東大生 Yさんによるお話)
- 慶應義塾大学三田キャンパスの訪問(卒塾生・慶大生 Nさんによるお話)
第一線で活躍する方々と触れ合い、知に満ちた場所を自らの目で見て感じる。
それは、机上の勉強では得られない「本物の学び」だと改めて実感します。
「私徳」と「公徳」の大切さ―島田先生のお話
島田晴雄先生は、慶應義塾大学名誉教授、前東京都公立大学法人(東京都立大学)理事長であられます。
小泉政権下では内閣府特命顧問として政策支援に携わり、政府税制調査会委員、対日投資会議専門部会部会長などを歴任されるなど、政府の政策形成にも深く関わってこられました。
また、2007年には総務省「ふるさと納税研究会」の座長を務め、当時の菅義偉総務大臣による構想の具現化にも尽力された、本当にすごい方です。
私は昨年より、島田晴雄先生が主宰されている「島田村塾」で学ばせていただいております。
その大変有り難いご縁もあり、「ぜひ弊社塾生にも先生のお話を直接お聞きする機会をいただきたい」とご相談したところ、快くお引き受けくださいました。
島田先生は、慶應義塾大学の創設者・福沢諭吉先生の思想をもとに、以下のようなお話を小学生たちに向けて語ってくださいました。
「まずは“私徳”を大事にしなさい。自分の体を大切にし、家族を大切にすること。それができて、はじめて“公徳”、つまり社会の利益を考えることができるのです」
島田先生は、「赤ちゃんや高齢者を支える社会の仕組み」「納税の意義」など具体的な例を交えながら、社会の一員としての責任と誇りを持つことの大切さを語られました。福沢諭吉先生の思想を土台に、「自分のため」から「社会のため」へと意識を広げていく大切さを、子どもたちにわかりやすく語ってくださいました。
実際の社会をつくっているのは、目に見えない“思いやり”や“責任感”かもしれません。
そのことを、島田先生のお話から、参加した子どもたちは真剣に耳を傾け、大きな学びを得ました。
志は、出会いの中で育つ
福沢諭吉先生の師、緒方洪庵先生
福沢諭吉先生は、大坂にあった「適塾」という学び舎で学びました。
この適塾を創設したのが、蘭学者であり医師であり、そして教育者でもあった緒方洪庵先生です。
洪庵先生は、当時まだ珍しかった西洋医学に深く精通し、天然痘から多くの命を救うべく、種痘*の普及に尽力しました。(*種痘:天然痘(てんねんとう)という感染症を予防するために行われた予防接種のこと)
また、身分や貧富に関わらず、学ぶ意志のある者には等しく学問の機会を与えるという姿勢で、数多くの若者を育てました。
その中の一人が、福沢諭吉先生でした。
私もこれまでに三度、適塾を訪れたことがあります。今も残る適塾の建物や洪庵先生の銅像を間近にし、若き日の福沢先生や洪庵先生の面影を確かに想像することができます。

福沢先生は著書『福翁自伝』の中で、洪庵先生の人柄についてこう記しています。
「腸チフスで倒れたとき、洪庵先生は私を実子と少しも違わぬ様子で看病してくれた」
「私は自分を本当に緒方先生の家の者のように思い、また思わずにはいられませんでした」
さらに、福沢諭吉先生の家庭に不幸があり、学費を払えなくなったときも、洪庵先生は事情を理解し、無償で学びを続けさせ、生活の面倒まで見てくださったといいます。
そうした「人を育てるということの本質」を、緒方洪庵先生は教えてくれているように思います。このような深い師弟の関係性こそが、福沢諭吉先生の学問と思想、そして、のちの慶應義塾創設へつながっていったのは間違いありません。
上記と同様の師弟の関係性について、2019年9月、アメリカのある会社訪問の機会をいただいた際に聞きました。その会社は、その当時は今ほど普及していなかった「zoom社」です。
zoom社の社員の方に、「御社の社長はどんな方ですか」と訊ねました。すると、その若い社員は、「私たちの社長は、私のことをまるで自分の家族であるかのように接してくれます」と話してくれました。
人も会社もこのような関係性のもとに成長していくものなのか、と感じた瞬間でもありました。

親の想いと支えに感謝して
福沢諭吉先生には、彼の考えを後押ししてくれたお母様の存在がありました。
島田晴雄先生も、お母様の存在に多くを支えられたとお話ししてくださいました。
私自身も、父と母が力を尽くして、私たち兄弟に進学の機会を与えてくれたお蔭で、現在の仕事につながり、家族や仕事の同志、たくさんの素晴らしい方とお会いする機会も頂戴できました。両親の献身と支えがあったからこそ、今の自分があります。
今回参加した生徒たちもまた、この合宿に送り出してくださったご家庭の理解と応援があってこそ、貴重な機会を得ることができたのです。
子どもたちへ、未来のために
改めて、島田晴雄先生に私がご指導いただくことができ、この度、弊社塾生が島田先生のお話や福沢諭吉先生の思想、慶應義塾に関するお話もいただくまでに、どれだけたくさんの方との「出会い」「親切」「愛情」「挑戦」「努力」「忍耐」「幸運」があったのか、思いを馳せています。
トップリーダーになるというのは、決して「偉くなる」ことではありません。
人のために、社会のために、何ができるかを考えられる人になること。
未来のために。私たちの使命を強く意識して行動していかなければと考えています。
参考文献:
『福翁自伝』福沢諭吉 著 昆野和七 解説(白凰社)
『現代語訳 福翁自伝』福沢諭吉 著 齋藤 孝 編訳(筑摩書房)
『適塾の謎』芝 哲夫 著(大阪大学出版会)